東京地方裁判所 昭和25年(ワ)7144号 判決
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(事実)
被告会社の臨時株主総会において、取締役の解任等の決議がなされ、その旨の変更登記がなされた。然るに右総会は取締役にあらざる訴外甲が被告会社の代表取締役訴外乙の代理人として招集したものであつた。そこで被告会社の株主である原告は、株主総会は取締役がみずから招集すべきであり、たとえ、甲が乙から本件総会招集の委任を受けていたとしても、かかる委任は無効であるから、本件総会は招集権限のない者によつて招集されたものである、と主張した。
これに対し、被告は、商法においては、公益法人の理事に関する民法第五十五條のような制限規定がないから株主会社の法定代理人である取締役は、民法第百六條の一般規定に基いて特定の行爲の委任をなすと、営業に関する一切の行爲の委任をなすとを問わず復代理人を選任し得るのみならず、さらに会社を代表して取締役又は支配人に非ざる総括的代理権限を有する一種の商業使用人を選任し得るのであるから、甲が乙の代理人として招集した本総会は適法に招集されたものである、と主張し、大審院大正七年(オ)第一六二号、同年五月四日言渡の判例を援用した。
(判斷)
判決は、取締役の権限行使は取締役自らこれをすることを要し、第三者をして代理させることはできない、との論処の下に原告の請求を認容している。「……商法第二百三十一條によれば、株主総会の招集権限を有する者は原則として取締役と定められているのであるが、およそ取締役の権限の行使は取締役自らこれをすることを要し、第三者をして代理させることはできないものといわなくてはならない。けだし取締役は会社経営についてのその者の個人的能力に対する特別の信賴に基ずき商法の規定により株主総会が選任したものであるから、その権限は自己の責任において自ら行使することを要すべく、取締役と会社との間には、この信賴関係を中断するような第三者(代理人)の意思の介在を許さないとみるのが相当だからである。もつとも、株式会社の取締役は、会社の営業に関する一切の裁判上、裁判外の行爲をなす権限を有するものであるから、取締役又は支配人のほかに総括的代理権を有する代理人を選任することができ、又取締役は会社の法定代理人たる地位において、民法第百六條による復代理人を選任することができることは、被告主張の通りである。しかし、かくして選任された代理人は、いずれも会社の代理人であつて、会社の機関たる取締役の代理人ではない。被告の援用する判例は、ただ会社の総括的代理人の選任の能否に関するものであつて、本件のように会社の機関たる取締役の代理人の選任に関するものでないから、結局被告主張の論拠を以てしては、取締役の権限を第三者が代理して行使することを許容する理由とは到底なし得ないのである。(中略)果して然らば、甲において乙の代理人として招集した本件総会は、結局招集権限なき者によつて招集されたことに帰し法律上株主総会ということはできない。從つて本件総会においてなされた本件決議は、法律上株主総会の決議たることなく存在しないものであるといわなくてはならない。」